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修理屋スグルと沈黙のFIVE LIARS.10  最終章  真相編②

2022-08-15
【LIAR CASE.2】 課長の嘘

いきなりだが…俺はメンテナンスが大嫌いだ!!
新人時代に習ったが全く上手くできない

俺はメンテナンスがヘタクソだったせいで若手時代は随分苦労した
それでも必死に頑張って、この南支店の課長にもなれた

そもそもメンテナンスなんて我がAVEC社には必要ないのだ
故障すれば同機種交換すればいいだけだ
あんなものを覚えなくても、一人前の営業マンとしてやっていけるのだ

俺のキャリアは正に順調そのものだった
ついに出世を重ね、課長にもなった

しかしそんな俺にも許せない存在が一人いる
それはあの修理屋だ!!!!

奴は俺と同期で、最初からメンテナンスがうまかった
俺は営業になり、奴は修理屋としてメンテナンスの道を歩んだ‥

すぐさま奴はメンテナンス部門のトップになった

俺はその後どうにかして営業課長になった
しかし会社の信頼や地位は、あの修理屋の方が上だった
なんとか状況を逆転する方法はないだろうか?
俺はその頃 そんなことばかり考えていた

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今から5年前の出来事だ!!

ある営業マンが一台の車いすを持ち帰ってきた
それは今の営業主任
当時はまだ南支店に配属したばかりだった…

彼が持ち帰った車いすは後輪がパンクしていた
利用者が車いすを使おうとしたら、タイヤがぺしゃんこになっていることに気がついたらしい

それで慌てて営業が車いすを引き取りに行ったというわけだ

営業マンが慌てた声で言う
「利用者様もカンカンですよ!!明日までに対応しないとかなりマズい状況です」
「課長、交換分は用意出来ないんですよね?…どうしましょう?…」

そうだ…この車いすは現在在庫がない
同じ商品がないと同機種交換をすることはできないのだ

俺は考える……そしてふと思い出した…
そういえば俺の車に同じ車いすがあった……ちょうど今日納品がキャンセルになった分だ……

これでこの営業マンを助けられる
営業マンに在庫があるのを教えようとした……
その時……俺はある案を思いついた……

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俺は1本の電話をかける
電話が終わった後に南支店の社員に伝える

「まぁでも安心してくれ…」
「今回は彼が来てくれることになった…」
「みんなもご存知のあの修理屋だ」

オオオオーーー!!!!!
周りから拍手と歓声が上がる

俺はその社員の反応を冷ややかな目で見つめていた

「何が修理屋だ…今にみておけよ」

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やがて一人の男が車から降りて、そのまま事務所に入って来た

俺が呼んだ修理屋
俺の同期で今やメンテナンス部のトップだ

手には工具箱を持っている

「待っていたよ」
俺は修理屋を歓迎する…振りをする

「交換分の商品も無くて困っていたんだ…」
「でも君が来てくれればもう大丈夫だ」

周りも全員安心している
まるで先程の絶望などなかったかのようだ
それほど彼の信頼は絶対なのだ

俺は彼に話す
「あまりゆっくり話している時間もない!!」
「それではさっそく始めてくれ!!」
「任せたぞ!!…修理屋!!…」

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彼は10分足らずで完全に修理をした

ぺしゃんこになっていたタイヤが完全に復活している
さすがの腕のようだ!!……
修理屋は修理が終わるとすぐに南支店を去って行った

事務所の中はまだお祭り騒ぎだ!!!!

「やっぱり凄い……頼りになる……」
営業マンも大喜びだ!!!!

「じゃあ私は車いすを返却してきます」

と、営業マンは修理が終わった車いすを納品しに行こうとした

「ちょっと待て!!!!」

俺は営業マンを呼び止めて、人目のつかない一階に連れて行った

そして俺は営業マンに二つの物を渡した
一つは自分の車から降ろした同機種交換分の車いすだ
そしてもう一つは破れた虫ゴム

俺は営業マンに言う
「いいかよく聞け!!…今 修理屋が修理した車いすがあるだろう!!…その車いすの虫ゴムをこの破れた虫ゴムに交換してから納品しろ!!」

営業マンはポカンとしている

「なぁに!!……すぐに空気は減りはしない!!タイヤがぺしゃんこになるまでに1週間はある…」
もし1週間後にクレームがきたら、すぐにこの交換分の車いすに同機種交換するんだ」
「いいか君はまだ南支店に配属されたばかりだろう?!…俺の言うことを聞いておけば悪いようにはしない……分かったな…これは命令だ!!!!」

営業マンはすぐに行動しようとしない…俺の指示に戸惑いがあるようだ…

お前のキャリアがどうなってもいいのか!…さっさと指示通りに動け!
俺は営業マンに激を飛ばし、無理やり指示を実行させることにした

営業マンは分かりましたと答えて、納品に行った

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そして1週間後に空気が抜け、クレームが発生した

しかしすぐに同機種交換をしたことで、むしろ南支店の対応の速さが評価された……

ちなみに今回のクレーム処理の対応を指揮したことは、全て課長ということになっている

こうして南支店と課長の影響力はどんどん拡大していった


逆にクレームの全ての責任はメンテナンス部門が負うことになった
そしてメンテナンス部の信用は地に落ちていった………

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【ある日の全社合同会議】

「南支店課長……何か意見はありますか……」

会議の議長が俺に意見を求めてきた

「メンテナンス部の件ですがねぇ……いやぁ…前回はひどい目にあいましたよ‥…」
「修理をしたところまでは良かったんですがねぇ……その後にまた同じように空気が抜けて故障して…それが原因でクレームなんですから……ビックリしましたよ……」
「ワッハッハ!!!!」

全員が俺の話を聞いている
もはや俺の影響力は絶対だ‥!!!!
今がチャンスだ!!‥…
なにが修理屋だ…ふざけるなよ‥
叩き潰してやる!!

俺は発言を続ける

「もはや必要ないんじゃないでしょうかねぇ??……」
「AVEC社にメンテナンス部門は必要ないかと思います!!」


「レンタル品は全て外注すればいいんですよ!!…破損すれば交換すればいいだけなんですから……その方が経費も抑えられるんでしょう‥…」

「浮いた経費で営業を増やしましょう!!」

「それで売り上げも倍増ですよ!!」

「ワッハッハ!!!!」「ワッハッハ!!!!」「ワーーハッハ!!!!」

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もはや今や俺を抑えられる人間はこのAVEC社には存在しなかった…

やがて株式会社AVECのメンテナンス部門の閉鎖が決まった……

俺は修理屋に勝った!

いや…メンテナンスに勝利したのだ!

ワッハッハ!!!!

続く
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