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心温まるストーリー★介護の現場から~介護すること、されること~★

自由な生活を取り戻したい

2021-11-01
Aさん(56歳・男性)は、長年会社勤めをされておられ、管理職として活躍をされておられましたが、半年前に脳梗塞を発症し、軽度の左片麻痺が残りました。それでも職場復帰することを目的に、奥様の支えのもと、意欲的にリハビリに取り組んでおられました。
その成果もあり、数カ月後には、杖歩行で会社に出勤することができるようになりましたが、その直後、脳梗塞を再発され、今度は右半身にも麻痺が残りました。

会社に復帰された矢先に脳梗塞を再発し、四肢麻痺が残ったことによる喪失感は大きく、以前のような職場復帰への意欲は持てなくなっておられました。今回は比較的麻痺が強く残ったため、奥様がリハビリをするように励ましても、職場復帰は無理だと諦めておられ、そのことにより生活意欲の低下をきたしておられました。

 ある時、ヘルパーに車いすを押してもらって通院した帰り、煙草を買いに寄り道をしたいと伝えたが、断られたことから、人に頼らないと何もできない不自由さを改めて痛感され、何とか自立をしたいという思いが芽生えられました。
 日中はほとんどベッド上で過ごしておられましたが、まずは自宅では自立をしたいという思いから、週2回の訪問リハビリを熱心に取り組まれ、その結果、徐々に自宅内でできることが増えてきました。しかし、外出に関しては、車いす介助をしてもらわなければならず、その姿をご近所の方々には見られたくないと、通所リハビリも断っておられました。
ある日、これまで操作が無理だと思い込んでいた、電動車いす(カートタイプ)の試乗を勧められて、初めて試乗したところ、自分の意志で自由に好きなところに行けることに強い魅力を感じられ、どうしても電動車いすを使って外出がしたいという思いが強くなられました。
それには、麻痺側の手のリハビリ等、解決しなければならない課題がありましたが、ご自身が希望する具体的な目標ができたため、懸命にリハビリに取り組まれ、ついに自分で電動車いすを操作することができるようになりました。
それからは、ヘルパーの車いす介助で通っていた病院も、ひとりで電動車いすを操作して行かれるようになり、その帰りにお店に寄って、たばこや好きなものを購入されています。更に、脳卒中当事者の会に一人で参加されるようになり、そこで知り合った友人たちと、電動車いすで一緒に出かけたり食事に行かれたりしておられます。
また、ご自身の能力を改めて認識されたこともあり、今では両手に自助具をつけてパソコンの操作もできるようになり、かつての会社の同僚や部下たちとメールでやり取りをして、在宅勤務という形で職場復帰も果たされました。
自分の意志で、自分の思う通りに自由に活動ができるということは、尊厳の保持につながるとても重要なことであります。
Aさんは障がいを負うことにより体験した不自由さを、電動車いすという福祉用具を活用することにより、解決できたことを実感され、更なる意欲向上につながり、会社に復帰されるという当初の目的を達成することができました。
自分のもとの力を復活できたという自信が、更なる生活意欲につながるという、良い循環が、福祉用具を活用するということで生み出されたのだと強く感じました。
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