介護現場の体験談を中心に、福祉用具についてのご紹介、介護保険等に関する情報を定期的に発信させて頂きます。
弊社とお客様のコミュニケーションの一助となれば幸いです。
心温まるストーリー★介護の現場から~介護すること、されること~★
6メートルの手すり
2023-09-01
6メートルの手すり
私とKさんとの関わりは約2年前からになります。
Kさんは当時43歳、仕事中に脳出血で倒れ緊急搬送。右半身麻痺と高次脳機能障害、言語障害が残り、リハビリ病院に入院されていました。
はじめてお会いしたのは、退院前にご自宅の環境を確認するためにお伺いした時でした。
Kさんとご家族、病院のリハビリの先生、ケアマネジャーを交えて、Kさんがご自宅で安全に暮らすことができるか、危険な箇所はないか、必要なものは何かを確認する場で、私も参加させていただきました。
当時のKさんは基本的に車いすで移動をされており、平坦な道で少しの距離であれば四点杖を使用して見守りと軽介助のもと歩行は可能でした。
ただ、段差昇降に関しては手すりと介助がなければ困難な状態でした。病院では階段昇降の練習もされており、左手で手すりを持ち、介助により階段を昇り、
階段を降りる際は、後ろ向きで左手に手すりを持ち、先に麻痺側の右足を一段おろし、同じ段に左足をおろすというように、介助の方に支えてもらいながらではありますが、
一段一段ゆっくりと降りていくことは可能でした。
ご自宅に戻るにあたって一番の問題は玄関扉から敷地外までの長い階段でした。
12段もある階段で、手すり等の掴まるところもなく、別の入口もない為、その階段を通らないとご自宅に辿り着けない環境でした。
退院前に自宅の住環境を確認した際に、屋外用の置き型手すりも持参し検討しましたが、当時のKさんの状態では土台がある事で麻痺側の足が滑ってしまい、安全に昇降できませんでした。
その為、ご自宅に戻るには住宅改修での手すりの取り付けが必要不可欠でした。
階段昇降時に左手でしっかりと持てるよう位置を確認し、図ると必要な手すりの長さはなんと6メートル。ここまで長い手すりは初めてでした。
その他にも電動ベッドと車いす、四点杖をレンタルしていただく事になりました。
退院日は約20日後でしたが、介護保険制度を利用し、退院にあわせて無事手すりの取り付け工事と福祉用具の搬入が完了しました。
長い階段を後ろ向きに降りなければいけない状況でしたが、支持する手すりを途切れることなく設置できたことで、無事ご自宅に戻ることが出来、ホッとしました。
Kさんは退院後しばらくしてから基礎体力づくりとリハビリの為、障がい者自立支援センターへの入所を選択されました。
一年近くリハビリに専念され、見守り、軽介助のもと、四点杖ではなく一本杖で歩行が可能な状態にまで回復されご自宅に戻って来られました。
ご自宅に戻られてからも、もっと歩けるように、もっとご自身の言葉で話せるように、ご自身でできることを増やせるようにと、
介護保険では週3回のデイケアを利用しながらリハビリを続けておられます。
退院当初は手すりと介助がなければ昇降できなかった階段も、今では手すりとご家族の見守りで昇降できるようになられ、Kさん自身の外出機会の向上や、ご家族の介護負担の軽減に繋がっている様です。
ご入院中からご自宅で過ごされる事を強く希望されていたKさんでしたが、自立支援センターへご入所中も、週末はご自宅に戻って過ごすことができたのも、「6メートルの手すり」があることで、いつでも戻れる安心感が大きかったのではないかと思います。
Kさんはとても真面目で、また昔から親思いの方で、ご両親に迷惑をかけたくないと、できる範囲で洗濯や洗い物などの家事を手伝っておられます。ご家族からも、手すりはとても助かっているといつもおっゃっていただき、私の励みになっています。これからもKさんとご家族の生活を、福祉用具や環境整備を通して支援させていただきたいと思います。
株式会社 ウィズ 東大阪センター 福祉用具専門相談員 中井 崇博

継続した支援
2023-08-01
継続した支援
大阪市にお住まいのAさんのご担当をさせていただいて約3年になります。
お父様、お母様との3人暮らしで今年で5歳になられる男の子です。児童、子供向け番組のキャラクターが大好きで、いつも笑顔でテレビを見ておられます。
最初にご相談をいただいたのは、Aさんが2歳の頃、病院のケースワーカーからのご相談でした。
けいれん重積型脳症のため入院されていましたが、在宅生活を始めるにあたって、日常的に痰の吸引が必要と医師からの指示があったとのことで、吸引器の相談を頂き、退院にあわせて吸引器を準備させていただきました。両上下肢に障がいがあり、ほぼ全介助ではありましたが、ご家族の介助のもとご自宅で生活をされていました。
その後、年齢とともに身体も大きくなられ、自宅でのご家族の介護負担も増えてこられました。
これまではご家族の介助のもと入浴をしていましたが滑りやすく、転倒しやすい浴室での介助は、ご家族にも負担がかかり、Aさん自身もゆっくりと入浴を楽しむことが徐々に難しくなってこられました。今後もご自宅での入浴を安心して継続して行えるように、看護師からの助言もあり、入浴用具の相談を頂きました。
お子様用の入浴用の担架や、洗い場で使用する洗身チェア等をご試用頂き、「洗身チェアではゆったりと一人でお風呂に浸かることができない」「お風呂でリラックスできる時間ができたら」との思いより、Aさん、介助者様ともに負担なく入浴していただける、入浴用の担架『湯らりん』を導入させていただきました。
ハンモックのようなネットに乗って、お風呂の中でゆらゆらリラックスでき、身体も楽に動かすことが可能となり、導入後はAさんの笑顔も増え、お風呂の時間が楽しくなったとうれしいお声をいただきました。
また、痰の吸引や、成長とともに身の回りの介護が増えていく事を考慮し、電動背上げ機能を活用し、今後も日常生活がより快適にお過ごしいただけるように、お子様用の特殊寝台も用意させていただきました。キャラクターが大好きなAさんのご要望に沿い、キャラクター模様の電動ベッドをご納品させていただきました。
お子様がご使用されるため、リモコンに触れ誤作動が起きないよう、介助者様がスイッチを踏んでいる時のみリモコン操作が可能な安全装置を付属し、ご家族、介助者様ともに安心してご使用いただいております。
ウィズでは小さなお子様から高齢者の方まで、様々なご利用者様と関わる機会があります。特に障がいを持つお子様は、成長と共に身体機能や介護状況が変化し、その変化に合わせて、適時生活環境を見直す必要があります。
今後もご利用者お一人お一人の個別性を重視し、適切な必要な対応を心掛けていきたいと考えています。
株式会社ウィズ西営業所 福祉用具専門相談員 今岡稔雄

ウィズ便りがつないだご縁
2023-07-03
ウィズ便りがつないだご縁
70歳のBさんは若い頃から市民マラソンに参加したり、水泳をしたりと、身体を動かすことが好きな方で、お父様、お兄様と3人で暮らしています。
令和3年2月、脳出血を発症しご入院、懸命にリハビリをされましたが、左上下肢に麻痺が残りました。退院後は施設に入所され、コロナ禍の面会制限でご家族とも会えず、一番辛い時期を過ごされました。
令和3年11月に自宅に戻った後は、ほとんど外出せず、麻痺のない足と手で車いすを操縦し、室内を移動していました。
そんな時に、テレビ番組でコギー(足漕ぎ車いす)を目にし、両足でこげる車いすに乗り、自分の力でペダルを漕いで車いすを動かしてみたい、
麻痺のある左足を動かすことでリハビリになるかもしれない、コギーを試乗してみたい、と思われました。
しかし、コギーを用意できる福祉用具事業所がなかなか見つからず、諦めかけていた頃、
ウィズ便りでコギーを利用している方の体験談を読まれた担当ケアマネジャー様から、
弊社へ相談のご連絡をいただきお試し頂くことになりました。
Bさんは驚くことに、初めて試乗した日から右足で力強くペダルを踏み込み、漕いだ勢いで麻痺側の左足も動き、ゆっくり室内を移動することができました。
しかし、左足の股関節が硬くなっている為、ペダルを漕ぐごとに左足が外転(外側へ向く)し、コギーのタイヤに足が当たってしまうことが判明しました。
そこで、付属品のレッグアシスト(伸縮性のあるバンド)を追加し左足に装着することで、外転することなく利用できるようになりました。
コギー導入当初は方向転換する時のハンドル操作や、室内の段差乗り越え時のスピード調整等、慣れない操作に戸惑われていたBさんですが、日々の努力で徐々にコツをつかみ、室内のみの利用から、屋外でも利用されるようになり、週2回程自宅近くの公園まで行かれるなど、移動距離も少しずつ長くなっていきました。
また、訪問リハビリの前には30分間コギーを漕ぎ、足を動かしリハビリの準備運動をすることも日課になりました。そうすることで、左足を出す幅が大きく、動かしやすくなり、足も軽くなったように感じておられます。
入院中のリハビリでは、介助者に後ろから両手でしっかり腰を支えて貰いながらの歩行でしたが、今では装具をつけ、四点杖や平行棒を利用し、介助者の見守りの中、ご自分の力で歩行訓練をされています。
最近はコギーで近くのスーパーマーケットへ行き、様々な商品をご自分で見て、買い物することを楽しみにされており、また、知らない方から「リハビリ頑張ってください」と声をかけて貰うことも励みになると話されています。
退院後はご自宅で過ごすことの多かったBさんですが、コギー導入後はリハビリに意欲的に取り組み、活動範囲を広げておられます。今後はデイサービスへ行く際にもコギーを利用し、施設内の移動もご自身で行いたいと、さらなる機能回復を目標にされています。

足代わりの車いす
2023-06-07
足代わりの車いす
Mさん(男性)は糖尿病を患い、治療を続けながらも、長年お母様の介護をされていました。
昨年の3月頃に玄関先で転倒され、左足を骨折し、ボルト固定で過ごされていましたが、その間もお母様と外出の際は、Mさんが車いすを押して出かけておられました。多少の痛みはあったもののお母様の介護を優先し、無理をしてそのまま過ごされていました。徐々に左膝下の痛みが激しくなり病院に行かれたところ、既に壊死が進行し、左下腿から切断することになりました。その後お母様が他界され、お一人での生活が始まりました。
左下腿切断のため、歩行ができず、室内は両手を支えにして臀部をついて移動し、外出はお母様の時に使用していた自走式車いすを自走して外出されていました。近場の平坦な道では問題なく移動できていましたが、通院までの道中に長い坂道があり、車いすを両手で漕いでの自走では坂を上れず、車いすを後ろ向きにし地面を蹴って坂を上っておられ、かなりの負担がかかっていました。この坂の移動が一番大変だったと振り返られています。
左下腿切断のため、歩行ができず、室内は両手を支えにして臀部をついて移動し、外出はお母様の時に使用していた自走式車いすを自走して外出されていました。近場の平坦な道では問題なく移動できていましたが、通院までの道中に長い坂道があり、車いすを両手で漕いでの自走では坂を上れず、車いすを後ろ向きにし地面を蹴って坂を上っておられ、かなりの負担がかかっていました。この坂の移動が一番大変だったと振り返られています。
玄関出入り口の段差を完全に解消するとなると、スロープが長くなり、市営住宅の廊下幅が狭くなり、車いす自体が90度回転できなくなるので、少し段差を残した状態での短めの設置になりました。
残った段差は、この電動車いすの特徴である大きい前輪タイヤで、うまく段差を乗り越える事ができ(※2)、室内の上がり框の段差もスロープを置いて居室内まで入る事ができました(※3)。
また、玄関ドアが内開きの為、開けた状態を固定することができず、出入りが困難でした。
お一人で電動車いすに乗ったまま出入りができるよう、Mさん考案のロープを利用したドア固定具が活躍しました(※4)。
Mさんは昔バイクショップで働かれており、よくバイク修理などもされていた為、手先が器用で、お一人で何でもしたいという思いがありました。
ヘルパーサービスの利用もなく、生活全般の事は基本的にお一人でされ、買い物の荷物が多い時などはご友人や近隣の方の協力を得ながら生活されています。
Mさんにとって車いすは無くてはならない足代わりであり、今では、近場のスーパーへは以前からある私物の自走式の車いすを漕いでスーパー内まで入って買い物をし、坂のある長距離の通院等は電動車いすを利用されています。
以前は坂の上りを後ろ向きで片足漕ぎし、車両や歩行者にも注意しながらの自走、下りはブレーキを調整しながらの安全確保等、本当にしんどい思いをされていたので、電動車いすを利用することで、楽に坂を上り下りすることができるようになり、安心して移動できるようになったと喜ばれています。
場面に合わせて車いすを使い分け、今まで負担のかかっていた事を福祉用具を利用する事で負担軽減のお手伝いができた事をうれしく思います。今後もさまざまなケースで、「福祉用具があって助かった」という声をいただけるよう、ご支援させていただきます。
株式会社 ウィズショールーム 福祉用具専門相談員 記虎邦之

自分を大切にしながら、ご家族の介護を続けていくために
2023-05-02
自分を大切にしながら、ご家族の介護を続けていくために
弊社でレンタルをご利用中のAさんは、現在要介護度5で生活全般に介助が必要ですが、ご主人はAさんの介護を続けながら、趣味やボランティア活動にお忙しい日々をお過ごしです。
Aさんが元気な頃は、弊社も出店している京急百貨店でご夫婦揃ってお買い物を楽しまれていました。
しかしコロナ禍の2021年1月頃、Aさんのご様子に変化が見られるようになりました。
食事の準備など、ごく普通の動作ができない、特にお買い物の際、お金の勘定ができないなど、ご主人は「これはおかしいな」と感じたとのことです。
2021年の暮れには奥様が外出先で転倒、ご近所の方に連れられてご帰宅されました。それ以後外出が不安になられ、一人での外出を控えるようになられたそうです。
ご主人が、京急百貨店・健康介護売場にご来店され、4点杖をご購入、介護ベッドの利用がスタートしました。
2022年4月頃、Aさんがご自宅で転倒され、それを機に、室内に手すりを取り付け、段差解消工事を実施。
その後、全身の機能低下や尿路感染症の為ご入院されます。2週間のご入院でしたがコロナ禍により面会はできず、認知症も進んでしまいました。
無事にご退院しご自宅へ戻られましたが、ほぼ寝たきりの状態でした。ケアマネジャーの提案で、訪問介護・訪問看護及び入浴サービスを利用されました。
それと同時に、ショートステイサービスの利用についてもケアマネジャーより提案を受けられたそうですが、
利用については、ご主人の心に葛藤があり、「自分が楽になるだけではないか」と相当悩まれたそうです。
そんな折に、ご主人が観られたあるテレビ番組の中で、
そんな折に、ご主人が観られたあるテレビ番組の中で、
「介護する人自身が自分の時間を楽しむ事が、次の介護の良さにつながる。自分の時間を作る事。」
という内容のお話があり、ハッと気付かされたそうです。
そして、2022年8月にショートステイサービスを開始され、現在も月一度のサービス利用をご継続中です。
Aさんもショートステイの利用については、拒否感無くお過ごしになられています。
ご主人は、実は趣味がジャズ合唱。
横浜は元々、日本最大級のジャズフェステバルが行われるくらいのジャズが盛んな土地柄です。年1回の発表会も、横浜市の馬車道にあるジャズ・バーでおこなっています。
またボランティア活動として「国際交流センター」で、外国人の方から母国語を学ぶ、外国語会話10教室のリーダーとして活躍されています。
このように趣味やボランティア活動ができるのも、Aさんのショートステイサービスのご利用があるからです。
Aさんの介護の日々も元気に送られており、笑顔で奥様とコミュニケーションを取られるようになられました。
ヘルパーや訪問看護師さんなどサービス事業者の方々との関わりの中で、一時はほぼ無くなっていたAさん自身の表情にも明るい変化がみられ、天気のお話などコミュニケーションを取ることが出来るまで回復されてきました。
ご主人曰く、福祉用具で一番助かっていることは、ベッドの背上げ機能で、かなり介護負担が軽減できているとのこと。
日中Aさんは室内用ティルト・リクライニング車いすを利用され、寝室から離床し、リビングでご主人と食事をとり、2・3時間程日光浴をされ、穏やかに過ごされています。
Aさんのショートステイサービス利用前は、肉体的にも精神的にもつらい日々だったそうですが、ショートステイの利用後は、ご自身の時間を持つことでき活きいきとしておられます。
ご主人の日々の心がけは、「自分ができることをする。決して無理はしない。」介護を続けるコツを教わりました。
株式会社ウィズ 横浜営業所 福祉用具専門相談員 市原康雄

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