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福祉用具消毒メンテナンス

修理屋スグルと沈黙のFIVE LIARS.9  最終章  真相編①

2022-07-29
【LIAR CASE.1】 営業主任の嘘
 
私が株式会社AVECに入社したのは、かれこれ10年前の話だ
 
もちろんこの会社に簡単に入社できたわけではない
思えば、あの就職活動の日々は私の人生で5本の指に入るほどの地獄のような日々だった
 
当時の私は今よりも口下手で、面接を受けては、落とされる毎日の繰り返しだった
それでも私は諦めなかった
面接で失敗するたびに、何が駄目だったのかを徹底的に研究した
そして私は自分を鬼にして、改善に改善を重ねた
そうして…ついに私は苦手な面接を克服することに成功した
株式会社AVECから、やっとの思いで内定を勝ち取ることに成功したのだ
 
AVECに入社した後も、苦労が絶えることはなかった
同期の社員たちは入社当時から活躍し、みるみる出世という階段を昇っていった
周囲の社員は私をどのような目で見ていたかはわからない
しかしそんな状況でも、私は腐らずにやってきた
株式会社AVECでコツコツ頑張ってやってきたのだ
 
ちょうど5年目に私はこの南支店に配属された
南支店はAVECの中でも売上がトップクラスの部署だ
私の実力もついに認められようとしているのかもしれない
 
去年は営業主任に昇格することもできた
何と喜ばしいことだ
私の努力もついに報われようとしているのかもしれない
そんな実感が湧いてきた
 
私は決して派手な活躍はできていないかもしれない‥
それでも順調に私はAVEC社で社会人としてのキャリアを積んできた
そしてその地位もようやく安定しようとしている
私はようやくこの長かった社会人生活の中で、安息の日々を迎えることができるはず……だった…
 
………………………………
 
そんな時だ…
今年になって二人の新入社員がこの南支店に配属されてきた
 
一人はいかにも新人といった感じだ
現在私と営業同行をして勉強している
 
あまり物覚えがいいわけではない
まぁまだ新人なので当たり前だ
 
それでいいのだ
私も昔はそうだった
一つ一つ仕事を覚えていけばいいのだ
きっと彼もまた、これから成長していくことだろう!!
 
問題はもう一人の新人だ
奴は教えたことは何でもすぐに吸収した
 
最初は良くできる新人くらいに考えていた
しかし奴の成長スピードは尋常ではなかった
 
一ヶ月が経つ頃には奴は1人で営業活動をするようになった
そして半年後には私の営業成績を抜かしてしまった!!
いつしか奴はAVECの未来のホープと呼ばれるようになった
 
奴が活躍するにつれて……私の存在感は徐々に薄まっていった…
このままでは、私がようやく築き上げた地位が崩れてしまう…
私はもはやこの大型新人に対して恐怖を抱くようになっていた…
 
………………………………
………………………………
 
ある日、事務所に一本の電話があった…
私はたまたまその電話の対応をした
 
なんとその電話は、奴の利用者からの電話だった
電話の内容は訪問時間の連絡だった
 
私は電話の内容をメールで奴に連絡しようとした
 
その時だ………
 
「嘘の訪問時間を教えてやろう」
「私に屈辱を与えた罰だ…お前も恥をかいてしまえ……」
 
私の頭の中で悪魔が囁(ささや)いてしまったのだ!!!!
 
 
………………………………
………………………………
 
そうだ………
 
奴に起きた一件目のクレーム…
嘘の訪問時間を奴に連絡したのはこの私だ
 
奴がすべていけないのだ…
 
新人に営業成績を抜かれた屈辱の日々……
そして…そんな私に対する周囲からの冷ややかな対応……
奴も私と同じ屈辱を味わう必要がある……
奴のせいで私が苦労して築き上げた社会での地位は崩壊した
その責任を奴に取らせる必要があるのだ…
 
………………………………
………………………………
 
しかし…私が仕組んだのはその一件だけだ…
ほんの少し奴に挫折を与えるだけでよかったのだ
 
まさかその後に3件もクレームが続くとは思わなかった……
 
それに気になるのは3件目と4件目のクレームだ
虫ゴムが原因でパンクだと……
まるで5年前のあの事件と同じではないか……
 
………………………………
 
5年前に私はまだ南支店に配属されたばかりだった
右も左も分からない私は課長の命令に絶対従う必要があった
そんなある日…私は課長に破れた虫ゴムと交換分の車いすを渡された
 
「今修理した車いすの虫ゴムを、この破れた虫ゴムに交換しろ…そしてその状態でこの車いすを納品しろ!!」
「しばらくして、この車いすの空気は抜ける…そしてクレームになるだろう…」
「なぁに安心しろ!!…クレームが発生した直後に、この同機種交換分の車いすを納品すればいい!!……それですべて大丈夫だ……」
「ワッハッハ!!!!」
 
と課長に命じられた
 
当時の私は課長に逆らうことなどできず、言われた通りに虫ゴムが破れた車いすを納品した
そして一週間後に車いすの空気が抜け、利用者からクレームの連絡があった
私はすぐに課長に渡されていた車いすで同機種交換を行い事態は収束した……
はずだった……
 
まさか後にあんな出来事が起こるとは思わなかった…
それからしばらくして……
なんとAVEC社のメンテナンス部が閉鎖されてしまったのだ
 
全て課長が仕組んだことだ…
私は恐ろしい人間を味方に付けてしまったのだ……
 
………………………………
 
………………………………
 
しかしあの破れた虫ゴムに交換した件は、課長と私しか知らないはずだ……
 
今回の3件目と4件目の事件は手口がまるで同じじゃないか?……
 
一体誰がどんな目的で、今回の事件を引き起こしているなだ?
当時のメンテナンス部の関係者が我々に復讐しょうとしているのか?…
まったく分からない………
頭の中がパニックだ……
 
そしてその復讐の牙はついに私にも向けられた……
私が納品した車いすにも細工がされていたのだ…
 
私はただ頑張ってコツコツキャリアを積み重ねていただけだ
 
………………
 
誰が私になんの恨みがあるのだ…
たった2回小さな罪を重ねただけじゃないか…
 
………………
 
私は決して悪くない
 
………………
 
あの悪魔のような課長が悪い…
そしてあの生意気な新人が悪い…
 
………………
 
私は決して悪くない
 
………………
 
続く
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