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修理屋スグルと沈黙のFIVE LIARS.3  第一部 序章編③

2022-04-19
そうだ!!
ホープ君の交換分の商品を手配しなければならない
今回は商品の同機種交換になる
同機種交換というのは、
レンタル商品を使っていて故障が発生した場合や、長年商品を使って経年劣化が起きた際に、同じ機種の商品に交換することだ!!
 
どうやら、1週間前に納品した車イスの空気が抜けてしまっていたそうだ
 
利用者様が車イスを確認したところ、空気が抜けてタイヤがペチャンコになっており、ホープ君に連絡が入ったのだ
2日後に車椅子を使うので、明日中に必ず交換してほしいという事だ
 
………………………………
………………………………
 
ちなみにこのAVEC社ではメンテナンス事業は行っていない
レンタル商品は全て別会社の株式会社ウィズから外注している
 
オレは商品を手配するためにウィズ社の東大阪センターに電話をする
 
プルルルプルルルプルルル
 
「ありがとうございますウィズの○○でございます」
 
電話がつながった
 
「いつもお世話になっておりますAVECと申します」
「在庫があれば本日中に車いすを1台手配させて頂きたいのですが…」
オレは希望の商品を伝えると、次にウィズ社のレンタル事務が商品の在庫を確認する
 
緊張の一瞬だ!!
当然ながら商品の在庫がないと同機種交換は成立しない
ここが運命の分かれ道なのだ
 
しばらくしてウィズ社のレンタル事務が話し出す
「商品は□□でお間違いないですね?!」
「在庫がございましたので、本日中にAVEC様の南支店にお持ちさせて頂きます」
「レンタル依頼書だけお送り頂けますでしょうか?」
 
「ありがとうございました」
「それでは依頼書を送らせて頂きます」
「失礼致します」
オレはそう言って、電話を切った
 
オレは在庫があったことに安心する
それからレンタル依頼書に、利用者様の「情報、商品名、希望納期」を記入する
 
よし!! 完成だ!!
レンタル依頼書の記入が完成した
あとはウィズ社にFAXを送ればOKだ
 
ピーヒョロロロ
ピーヒョロロロ
 
FAX送信も無事に完了だ
オレは業務を成し遂げた
 
………………………………
………………………………
………………………………
………………………………
 
ホープ君に商品の手配ができたことを報告しよう
オレはホープ君を探しに行く
たまたま彼が前を通り過ぎた…
 
「先程の同機種交換の件だけど、無事に商品の手配ができたよ!!」
オレはホープ君に報告した…
 
「……………………」
「……………………」
 
「……………………」
「……………………」
 
ホープ君はオレの報告に対して何も答えようとしない
さらに沈黙は続く
 
「……………………」
「……………………」
 
「……………………」
「……………………」
 
って…無視かい!!!!
ようやくオレは無視されていることに気が付いた
同時にオレの心は深く傷ついた(;_;)
 
一応オレの方が年上なんですけど‥…
返事くらいしてほしいなぁ…
まったく近頃の若いモンは‥…
 
そう思いながらホープ君の顔を見た
すると……
 
………………………………
……………………
なんとホープ君の顔が青ざめている
顔面蒼白だ
………………………………
 
オレはホープ君に質問する
「いったいどうしたんだい?」
 
ホープ君がゆっくり話し始める
「すいませんスグルさん……」
「実はもう一台車いすの手配をお願いしたいのですが……」
弱々しい声でホープ君が話を続ける
 
「さきほど別の利用者様からまた同機種交換依頼の連絡がありました」
「同じように1週間前に納品した車いすなのですが……‥」
「空気が抜けて使えないので、明日中に交換分の車いすを持ってきてほしいとの事でした……」
 
……………………………
「これで今月4件目のクレームです…」
 
「僕はどうすれば……」
……………………………
 
ホープ君はひどく落ち込んでいる
オレは急いでウィズ社に連絡して、同機種交換分の車いすを手配する
ウィズ社に在庫があり、本日中に南支店に商品を届けてくれるそうだ
 
ホープ君に報告する
「同機種交換分の車いすの手配ができたよ。本日中には商品が入荷するから明日納品できるよ」
 
……………………………
「わ……わかりました……」
「あ…ありがとうございます………」
……………………………
 
ホープ君の声にもはや力はない
かろうじて聞こえるのがやっとだ
そしてホープ君は、ゆっくりと力なく席に戻って行った
 
そんなホープ君に同じく新人の見習い君が声を掛ける
「ボク昨日ベッドを一人で納品できるようになったんだよ!!凄いでしょ!!君に負けないようにボクも頑張るよ!!」
そう言って去っていった
 
………………………………
「見習い君!!今じゃないでしょ!!」
「傷付いてる人にそんなこと言っちゃだめでしょ!!」
「頭に思いついたことをすぐに言っちゃだめでしょ!!」
「もうちょっと空気を読めるようになりましょうね!!」
 
見習い君の「天然爆弾」が傷付いたホープ君に炸裂してしまった
 
見習い君に追い打ちをかけられた「ホープ君の顔」は先程よりも青白くなっている…
 
……………………………
「頑張れホープ君!!」
……………………………
 
そう思いながらもオレは状況を整理する
しかしこれはどういうことなのだ?
南支店はAVEC社の中でも最も優秀な部署だ
クレームなどほとんど聞いたことすらない‥…
それがこの短期間で4件のクレーム
しかもそのクレームの全てが完璧主義のホープ君に集中している
 
明らかにおかしい
 
……………………
 
まさか‥‥
まさか本当にこれは連続事件なのか?
ホープ君は本当に誰かに狙われているのか?
……………………
オレは心の中で自分のミッションをもう一度確認する
 
実はオレのミッションは事務屋としてレンタル商品の手配をすることではない
それはあくまで仮の姿だ!!!!
 
オレの真のミッションは……
………………………………
この一連の事件の犯人を暴き出すことだ!!
そのためにオレはこの南支店に潜入しているのだ!!!!
………………………………
ホープ君よ…もう少しだけ我慢してくれ
 
「この事件は修理屋の名にかけてオレが必ず解決する!!」
 


続く
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