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修理屋スグルと沈黙のFIVE LIARS.1 第一部 序章編①

2022-03-11
【5年前】

キキキキィィィーーー!!
1台の車が大急ぎで事務所に戻ってきた…
 
「課長、引き取って来ました!!」…
そう言って、営業マンが車から1台の車いすを降ろす…
 
「これは想像していたよりヒドイな」
課長が車イスの様子を確認する‥
 
「利用者様もカンカンですよ!!明日までに対応しないとかなりマズい状況です」
営業マンがかなり困っている
「課長、交換分は用意出来ないんですよね?どうしましょう?」
 
課長がしばらく考えた後で、重い口を開く
 
「そうだ!! その商品は今は在庫がない!! 」
「今回は残念ながら同機種交換をすることは無理だぞ!!」
 
周囲に絶望が走る
 
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課長が誰かに電話をしている…
課長がその電話を切ったあとに話し始めた
 
「まぁでも安心してくれ…」
「今回は彼が来てくれることになった…」
 
オオオオーーー!!!!!
周りから拍手と歓声が上がる
 
「もうすぐ到着する頃だ」
「彼の予定が空いていて本当に助かったよ」
 
そうやって事務所で話し合っている間に、一台の車が南支店に到着した!!!!
 
一人の男が車から降りて、そのまま事務所に入って来た
手には工具箱を持っている
 
「待っていたよ」
 
課長が歓迎する
「交換分の商品も無くて困っていたんだ…」
「でも君が来てくれればもう大丈夫だ」
 
周りも全員安心している
まるで先程の絶望などなかったかのようだ
それほど彼の信頼は絶対なのだ
 
課長が話を続ける…
「あまりゆっくり話している時間もない!!」
「それではさっそく始めてくれ!!」
 
任せたぞ!!…修理屋!!…
 
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【現在】

オレはスグル
電車に揺られて一時間……
本日も株式会社AVECの南支店事務所に出勤だ
 
「おはようございます」
 
周りの社員に挨拶をしながら、まずはパソコンの電源ボタンを押す
パソコンが起動するのを待ちながら、オレはAVEC社の黄色いジャンパーに袖を通す
「しかしいつ見ても派手なジャンパーだ……」
業務には慣れてきたが、この服にだけはまだ抵抗がある
 
「それでは本日の朝礼を始めます」
当番の声がフロアに響き渡り、やがて朝礼が始まる
 
「株式会社AVECの社是を唱和します」
号令に合わせて、部署全員で社是を唱和する
 
「挑戦と創造。夢や希望は実現する…‥…」
社是の唱和が始まる
オレも覚えたての社是を周りに合わせて言う
 
ようやく社是を唱和し、それと同時に朝礼も終わる
 
朝礼が終わり、自分のデスクに戻る頃にはパソコンも起動していた
席に座りオレは気合を入れる
こうして今日も事務としてのオレの一日が始まるのだ
 
レンタル事務屋スグル
それが今のオレに与えられたミッションだ

続く
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