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福祉用具消毒メンテナンス

修理屋スグルと戦慄のパーキングミッション ⑥ノーリミット

2022-01-18
雷鳴が闇を照らす
スグルハンドが青白く燃えている!!
覚悟は決まった!!
 
あとやることは一つだけ!!
 
目の前の車いすを修理するだけだ
 
 
修理を成し遂げたいという気持ち…
そして利用者様への思いが頂点に達したとき…
オレの体に変化が起きる
 
しかし器がまだ完成していない…
オレの体が耐え切れるかだけが唯一の不安要素だ…
 
まぁ今さらそんなことも言ってられないだろう
コイツを倒さない限り修理屋として明日を生きる資格などないのだ
 
 
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修理方法は単純明快だ
 
ベストな位置にブレーキを調整してやればいい
 
復習だが‥…
車イスの駐車ブレーキを調整する場合は、次の点に注意して行う必要がある
 
・使用する間に車いすの空気圧は減っていく
・予め空気圧が減ることを計算し、位置を調整する必要がある
 
今回のように
空気がパンパンに入った状態で、ぎりぎりブレーキが効くようにブレーキ位置を調整しておくと、
少しでも空気が減るとタイヤの押さえけられる力が弱くなり、ブレーキは効かなくなってしまうのだ
 
しかし、
タイヤとブレーキの位置を近付けすぎると、固すぎてブレーキを掛けれなくなってしまう
 
つまり
タイヤとの距離が、遠すぎず近すぎない位置にブレーキを調整する必要があるのだ
 
ブレーキ位置写真
理屈は簡単だ
しかし実際に調整するとなるとそう単純ではない
 
まぁうまくいくまで何度でもやり続けてやるさ
オレはもう一度覚悟を決める
 
 
 
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オレはさっそく工具を握り調整を開始する
 
「まずは少しブレーキをタイヤに近づけて見よう」
 
オレは固定部品を緩めブレーキをタイヤ側にスライドさせて固定する
 
「中々いい位置じゃないか」
「スグルハンドのおかげで位置調整も容易だ」
 
前回よりも明らかに良い位置に調整できた気がする
 
「試しに空気を抜いてみよう」
 
オレは後タイヤの空気を抜く。
空気を抜いた状態でもブレーキが効いていれば完成だ
 
「ダメだ……」
 
少し空気を抜いた段階でブレーキは既に効かなくなってしまった
 
一度目は失敗に終わった
 
「なあに!!一度や二度で成功するなんて思っちゃいないさ」
 
次はもっとブレーキをタイヤに近づけて固定してみる
 
 
「ダメだ……」
 
今度はタイヤに近すぎて、ブレーキを掛けることができない。ブレーキが固すぎる
「もう一度チャレンジだ」
 
 
 
 
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そう言って…
何十回チャレンジしたことだろう
 
何回やっても一度たりともベストな位置にブレーキを調整することが出来ない
 
「なんだこの怪物は……」
 
スグルハンドも限界が近づいてきている
 
また何回も同じ調整を繰り返していく
しかしことごとく失敗に終わる
 
オレはチャレンジこそするが、徐々に以前より希望が無くなってきているのを感じていた……
 
 
 
「やはりオレは駄目なのか‥‥しょせんオレには無理なのか… …」
「これがオレの限界なのか……」
 
 
 
 
 
 
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どうしていつもこうなんだ
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思えば、オレの人生はいつもそうだ…‥
何一つ成し遂げたことなどない……
精一杯努力してもたかが凡人止まりだ……
しょせん人の役にたつような人間ではないのだ…
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オレはしょせんダメなやつなんだ
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いきなりだが……
オレにはセンスというものがない
何かをやった時にはじめからうまくいったことなど一度もない
たった一度たりともだ
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そう言えば昔からいつもこんなことばかりを考えていた気がする……
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「本当にその通りだ……そうやって周りの人間が成功するのをいつも見てきたんだ‥」
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自慢じゃないが努力することは別に嫌いではない
それで標準レベルくらいには到達出来る
工夫して人並みには何とか辿り着けるのだ
これはこれで凄いことだし、自分を褒めてやりたい
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「違う…………そうじゃない……‥そうやって自分を褒めて………それで自分を肯定して、それ以上努力しなくてもいい理由を自分で作っていたんだ…オレはただ現実から逃げていただけだ…」
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ところが世の中には特に努力をしている様子もないのに最初から標準よりレベルを超えてくる人間がいる
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「一生オレにそんな人生はこない……オレは一生凡人のままで終わりだ…」
「オレは今回もまたダメみたいだ……‥…」
「オレは終わりだ‥…………」
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「イヤ‥…………だ‥……」
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「イヤだ」
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「そんな人生はイヤだ」
「オレはこれからもずっと困難から逃げていくのか…自分に限界を作って凡人として生きていくのか……そんなのはまっぴらごめんだ…‥」
 
 
オレはもう一度スパナを握りしめる
 
 
 
スグルハンドはとうに限界だ
 
「そんなことは知ったこっちゃない…
オレは今まで自分に限界を作って現実から逃げていただけだ…今回もそうするのか‥…そのままでいいわけがない」

「自分の道は自分で切り開け……限界なんて物は超えるためにあるのだ…自分で勝手に作るな!!」
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最初から標準よりレベルを超えてくる人間がいる
これがセンスがある人間というやつだ
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「そんな人間はいない!!そういう人間はその前に血ヘドを吐くような努力をしているんだ!!限界のない努力をしているんだ!!いつも逃げていたオレといっしょにするのがそもそも失礼だ!!」
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もう一度ブレーキ調整をしたが、今回もベストな位置には調整出来なかった
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「失敗なんて関係ない!!次だ!!次もう一度だ!!」
「限界なんて自分で作るんじゃねぇぇーー!!超えろー」
 
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これがセンスがある人間というやつだ
敬意を込めてセンス様と呼ばせて頂くことにしよう
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「最初から何でも出来るやつなんていねぇぇーー!!いたとしてもそれがどうしたーー!!センス様がどうしたぁぁーーー!!!!」
「オレは………オレは……オレはぁぁーー…」
 
 
 
「それならオレは誇り高き修理屋スグル様だァァァァァーーーーーー!!」
 
 
 
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スグルハンドが輝きを取り戻してきた
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何が言いたいかというと、凡人がいくら努力したところでセンス様を超えることなど出来ないということだ
あの方々は選ばれて生まれた超人なのだ
これが残念ながら現実というやつだ
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「そんなことはない」
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「そんなことはない!!凡人でもそこに限界を作らなければ可能性は無限に広がるんだ……今からオレがそれを証明してやる」
「現実だろうが超人だろうがオレが今から全て超えてやる!!」
 
 
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オレは工具を握り、全てを込めてブレーキをもう一度調整する
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「決して諦めるな!!」
 
「超えろ!!!!今までオレが無理だと思ってきた全てのモノを超えろ!!」
「本当に選ばれた人間がいるのなら、それすらも今ここで超えろ!!」
 
 
「限界なんて勝手に自分で作るな!!もし、あったとしても自分で超えていけばいいだけだ!!可能性は無限に存在するんだ!!!!」
 
 
 
 
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握り締めた工具がいつもより身近に感じる
まるで工具と一体化しているみたいだ
そうか!!これがスグルハンドの真の力か!!
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「超えろぉぉーー!!!!」
 
「オレに限界なんてないんだぁぁー!!!!」
 
「超えろぉぉおーー!!!!」
 
「今までのオレの人生を超えろぉぉーー!!!!」
 
「限界を超えろぉおおおーーー!!!!」
 
「現実を超えろぉおーーー!!!!」
 
「未来を超えろぉぉぉーー!!」
 
 
「すべてを超えろぉぉおおおおーー!!!
 
 
「センスを超えろぉぉおおおーーーーーーーーー!!!!」
 
 
 
 
 
 
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気が付くと両腕はボロボロになっていた
あれは一体なんだったのか
オレの人生で一度たりとも体験したことがない出来事だった
 
 
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まるで激しい大嵐の後に静寂が一気に訪れたみたいだ‥
気が付くとベストな位置にブレーキは調整されていた…
 
オレは遂に成し遂げたのだ……
 
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次回最終回

続く
 
 
 
 
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